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なぜ副業禁止はこれまで続いてきたのか?法律的に問題ないのかも解説

なぜ副業禁止はこれまで続いてきたのか?法律的に問題ないのかも解説

新型コロナウイルスの感染拡大により、世の中の意識や働き方がこれまでにないような大きな変化をもたらしています。会社の業務遂行の方法も様変わりし、在宅でのリモートワークが普及・定着し、営業や会議の実施方法も大きく進化しています。 コロナ禍により生産性や効率性が低下し、業績の低迷が続く企業も多く、影響を受けた従業員の生活が成り立たない状況も生まれています。このことだけの影響ではありませんが、最近副業に対する関心が高まっており、実際にスタートさせた人も多くいることでしょう。

新型コロナウイルスの感染拡大により、世の中の意識や働き方がこれまでにないような大きな変化をもたらしています。会社の業務遂行の方法も様変わりし、在宅でのリモートワークが普及・定着し、営業や会議の実施方法も大きく進化しています。

コロナ禍により生産性や効率性が低下し、業績の低迷が続く企業も多く、影響を受けた従業員の生活が成り立たない状況も生まれています。このことだけの影響ではありませんが、最近副業に対する関心が高まっており、実際にスタートさせた人も多くいることでしょう。

日本の現状は政府の推進もあり、副業解禁の方向性が見えてきたものの、まだ副業を禁止している会社が多く存在します。なぜ、会社は副業を禁止しているのか、その理由や副業解禁への流れなどをわかりやすく解説していきます。

副業禁止の理由

各種法律で副業禁止の規定は定められていません。副業禁止は、日本の雇用関係に根差したもので合理性を疑問視する声があります。
なぜ、会社は副業を禁止してきたのか、その理由や背景について紹介していきます。

副業禁止に対する会社の本音

① 本業へ影響が出ることへの懸念
余暇利用のアルバイトなどの域を出るような副業、たとえば、終業後毎夜5~6時間従事するなどの場合は本業に支障が出ると考えられます。本業の生産性や効率性が著しく低下すると判断されてもやむを得ないでしょう。

② 優秀な人材・スキルの流出の防御
優秀な人材こそ副業の能力も高いと考えられており、ヘッドハンティングも珍しくありません。会社としては優秀な人材を手放すことは避けたいので、そのリスクヘッジとして副業を禁止していることが想定されます。

③ 雇用関係にある会社に尽くすべきである
日本の伝統的な雇用関係である年功序列の思想は減りつつあるも今だ根強く残っています。特に中小企業においてはさまざまな環境や事情により、保守的な考え方が支配的であり、転職もままならない状況は続いています。

伝統的な雇用関係がある以上、会社の立場が強く、社員の地位の向上がまだ不十分である傾向が強いといえます。ですが、終身雇用というキャリアがなくなりつつあり、先行き不透明な時代が続く以上、会社がどこまで社員を守ってくれるかは疑問です。

副業禁止の具体的理由

では、会社が副業を禁止する具体的な理由は何でしょうか?次のように整理できます。

① 社員の長時間・過重労働を助長する
副業をすることによる長時間労働は社員の心身に多大な影響を及ぼすことになります。会社としては
副業にかける時間まで社員の健康を守ることはできません。

もともと、社員は適正に業務を遂行するために自ら健康管理をする必要があり、会社側も健康診断などを通じて健康管理を行っています。それに加えて勤務時間外の健康管理まで会社が行うことは無理なのです。結局、会社としての適切な労務管理ができないこととなります。

② 本業に集中できず、業務に支障をきたす
副業に従事することで本業への集中力がなくなり、業務効率の悪化や生産性の低下につながることになります。度を越した副業への従事は疲労や睡眠不足を回避することはできません。副業に熱中するあまり欠勤や遅刻が増え、責任のある仕事ができなくなります。

③ 情報漏洩のリスク
競合他社への顧客情報、営業ノウハウなどの機密情報が他社へ流出するリスクは何があっても回避しなければなりません。会社の機密・最新情報が仮に流出した場合、会社に甚大な被害を与えることになります。

④ 企業に対する信頼・ブランドの低下を危惧している
副業はあくまで社員個人の裁量で行われるため、会社の管理監督は不可能です。特に、インターネットやSNSが普及した現代では、社員が起こした信用失墜行為は、業界や国内だけでなく、全世界に同時に拡散してしまうリスクがあります。終業後の社員の不正行為を未然に防ぐことは不可能です。

⑤ 人材流出を防ぐ
長い年月をかけて育成してきた人材の流出は会社にとって大きな損失となり、併せてその社員が持っていたビジネススキルの流出も引き起こしてしまいます。会社の目の届かない副業はそういった人材・スキル流出の機会や契機を与えるリスクを持っています。優秀な人材は自社で確保しておきたい、他社には渡したくないという二重の事情があります。

副業禁止から解禁へ

終身雇用制の崩壊や長引く不況・コロナ禍による収入の減少など会社員を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。インターネットの普及もあり、副業で収入を得ることが容易になり、自己のスキルアップや趣味の拡大を目指して副業を希望する人が急増しています。
副業禁止は法的根拠がないだけに、会社側の対応が遅れ気味です。

副業の定義

副業は法令による定義はなくあいまいです。副業の範囲についても明確な規定はありません。本業に従事しながら、並行して本業とは異なる仕事をして収入を得れば、本業以外の仕事を副業と捉えられるでしょう。本業は労働の対価として賃金を得ますが、副業の場合は労働の対価のほか、株式・不動産などの投資による収入も含まれることになります。

では副業に該当するかどうかの判断基準はどうなっているでしょうか。法的根拠がないので、結局常識的な個別判断に頼らざるを得ません。

① 労務提供型と不労所得型
事業主として事業を展開するといった「労務提供型」は副業に該当します。一方、株式投資や不動産投資のように労働の対価以外で収入を得る「不労所得型」は副業には該当しません。

② 営利目的かどうか
ボランティアや趣味のブログで発生した少額の広告収入などは副業には該当しません。

③ 反復継続性があるか
1回限りのアルバイトや不用品をネットショップで売却するなどは副業とはいえません。

副業解禁の流れ

副業解禁の流れについて紹介していきます。
〇 厚生労働省「モデル就業規則」の改正(2018年1月作成、2019年1月改定)
「副業禁止」の文言が削除され、次のような規定が新設されました。

(副業・兼業) 第67条
労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。 3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会 社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

副業解禁を前提とした内容に変更されました。副業解禁を強く推進する姿勢が表れ、原則副業OKの方向性が示されました。

〇 2019年4月より施行された「働き方改革実行計画」において、本格的に副業解禁を推奨することとなりました。働き方改革の大きな柱である多様な働き方の実現がポイントです。

〇 2020年9月、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定が行われました。企業側は原則副業を認める方向性が適当であると労働時間管理の具体的方法にまで踏み込んだ内容となりました。

会社の対応

多くの労働者が収入の不足分を副業で補い、自己のスキルアップを目指すため、副業を希望する時代になりました。就業規則で副業を禁止している場合や副業に触れていなかった会社においても規定の整備が急務となりました。

まだ副業を禁止している会社が多いものの、優秀な人材を確保したい、社員のスキルアップを望むなどの観点から副業を認める方向で検討を進めている会社が増加しました。業種・業態にかかわらず、副業を解禁し、離職率の低下を実現している実例もあります。ただし、大企業は対応が早いのですが、中小企業は保守的で反応が鈍くなっています。

副業禁止に関する諸問題

副業禁止に関するさまざまな問題点について紹介していきます。副業を検討されている人はぜひ参考にしてください。

法的問題

日本国民は憲法第22条第1項において、公共の福祉に反しない限りという条件付きで職業選択の自由が保障されています。実際の条文は次のとおりです。
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
② 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

職業選択の自由には、選択した職業をどのように遂行するかという自由が含まれていると解されています。終業後や休日の時間に会社以外の仕事をすることの自由も認められるとされています。

また、労働法においても副業の禁止は明確に定められていません。会社が副業を禁止することも法律違反ではありません。会社側は就業規則などにより独自のルールを定めることができます。副業禁止または許可・認可制にすることも可能です。

就業規則は法律に基づいた規則ではなく、会社が独自に作成・運用するものです。労働者と使用者間の契約といってもいいでしょう。
過去の判例では勤務先会社への重大な背信行為でないものや勤務に支障のないレベルの副業については、解雇処分を無効としています。

一般会社員の場合

会社が就業規則で社員の副業禁止を定めることは問題ありません。懲戒処分の規定を明記すれば懲戒処分を科すことも可能です。しかし、労働法では副業に関する規定はなく、憲法でも職業選択の自由が保障されていることから、勤務時間外の時間は自由に使うことができ、法律を根拠に処分される可能性は低いといえるでしょう。

副業で懲戒処分となる場合

副業が原因で会社に損害を与えた場合は懲戒処分の対象となります。就業規則などで具体的に、詳細に規定することは難しいのですが、個別の判断とならざるを得ません。

① 本業に支障をきたした場合
勤務時間中に副業をする、遅刻・欠勤が目立つ、疲労・睡眠不足で業務に集中できないなど本業に支障をきたす顕著な事実が発生した場合は懲戒処分の対象となるでしょう。

② 同業他社で働いた場合
同業他社での副業、競合する可能性のある会社の設立などは会社の利益を侵害することになります。会社に対する背信的行為とみなされる可能性があります。

③ 会社の機密や情報の漏洩の場合
業務上知り得た会社の機密や情報などを流出させる行為やその機密などを利用して営業活動を行うなどは会社に多大な不利益を与えるほか、会社の社会的信用の失墜行為となります。

④ 対外的な信用を損なう場合
副業が原因で会社の信用やブランドを毀損した場合、詐欺などの犯罪行為や公序良俗に反する行為をした場合などは会社の信頼・信用を損なったと判断されるでしょう。

まとめ(副業により収入増加とスキルアップを実現し、生きがいのある人生を目指してみよう)

ここまで副業禁止の理由や副業禁止・解禁にまつわる諸問題などについて紹介してきました。大手企業から中小企業まで副業解禁が進んでいく中、まだまだ不透明なところもありますが、徐々に副業を容認する姿勢は広まりつつあります。

副業は労働者にとって大変魅力的な働き方です。収入面以外にも、自己のスキルアップ、人生の幅を広げる趣味の拡大、人や地域とのつながりを深めるなど多くのメリットがあるからです。

今後副業をスタートさせたいと考えている人は、まず勤務先の就業規則を確認することから始めましょう。そして副業により収入もスキルもアップし、生きがいのある充実した毎日を過ごすことをおすすめします。

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